次回のものづくり補助金の概要(令和元年度補正予算案より)
経済産業省令和元年度補正予算案より、次回のものづくり補助金の概要が見えてきました。前回(平成30年度第2次補正予算)との主な変更点という観点から整理します。
目次 1.複数年にわたる実施 2.給与支給総額の向上と事業場内最低賃金が申請要件に追加 3.事業終了後のモニタリング期間が3年に変更 4.通年の公募 5.補助金申請システム:Jグランツによる電子申請 <補助金申請システム・Jグランツの主な特長> 6.既受給企業には減点措置を発動 |
1.複数年にわたる実施
予算案のPR版には以下のとおりの記載があります。
「中小企業基盤整備機構が複数年にわたって中小企業の生産性向上を継続的に支援する「生産性革命推進事業(仮称)」を創設し、中小企業の制度変更への対応や生産性向上の取組状況に応じて、設備投資、IT導入、販路開拓等の支援を一体的かつ機動的に実施します。」
これにより事業実施期間に余裕が出る可能性があります。これまで通常の1次公募では6月採択発表後、12月までに事業完了となっており、事業期間は6ヶ月程度しかありませんでした。そのため、大型の設備投資や時間のかかる試作品開発については、事業期間中に完了させることが難しい状況にありました。今後、複数年にわたる実施により事業実施期間に余裕が出れば、より地に足のついた事業の実施が可能となります。
2.給与支給総額の向上と事業場内最低賃金が申請要件に追加
予算案のPR版に以下のとおりの記載があります。
「事業計画期間において、「給与支給総額が年率平均1.5%以上向上」、「事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上」を満たすこと等を申請要件とします。(持続化補助金及びIT導入補助金の⼀部事業者は加点要件)」
これ以上の具体的な記載がないため、様々な解釈ができるとは思いますが、「給与支給総額が年率平均1.5%以上向上」と「事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上」という2つの条件が、ものづくり補助金では申請要件となり、生産性革命推進事業(仮称)の残りの2つである持続化補助金とIT導入補助金では加点要件になるということかもしれません。
また、予算案のPR版には以下のとおりの記載もあります。
「要件が未達の事業者に対して、天災など事業者の責めに負わない理由がある場合や、付加価値額が向上せず賃上げが困難な場合を除き、補助金額の一部返還を求めます。」
補助事業終了後の3~5年のモニタリング期間において要件を満たすことができない場合には、補助金額の一部を返還する旨が「公募要領」や「補助事業の手引き」に記載されることになると思われます。しかしながら、この規定がどの程度発動されることになるかはわかりません。
3.事業終了後のモニタリング期間が3年に変更
ものづくり補助金自体の成果目標について、予算案のPR版の表現について、以下のとおりの変更があります。これにより、事業終了後のモニタリング期間が5年から3年に変更になる可能性があります。
前回 | ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業により、事業終了後5年以内に事業化を達成した事業が半数を超えることを目指します。 |
今回 | ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業により、事業終了後3年以内に、以下の達成を目指します。 |
4.通年の公募
予算案のPR版には以下のとおりの記載があります。
「通年で公募し、複数の締め切りを設けて審査・採択を行うことで、予見可能性を高め、十分な準備の上、都合のよいタイミングで申請・事業実施することが可能になります。」
これまでは通例年2回の公募でしたが、公募の回数が増える可能性があります。現状のように、1次公募が採択されやすく、2次公募が採択されづらいといった偏りがないような運用を希望したいものです。
5.補助金申請システム:Jグランツによる電子申請
予算案のPR版には以下のとおりの記載があります。
「 補助金申請システム・Jグランツによる電子申請受付を開始します。」
前回は中小企業庁が開設しているポータルサイト「ミラサポ」の会員ページ内に設けられた補助金電子申請システムを使用した電子申請でした。今回からは経済産業省が新たに設けた「補助金申請システム・Jグランツ」を使用することになります。Jグランツは経済産業省が2019年12月24日にプレスリリースをしており、主に以下のとおりの特長を持つシステムです。
<補助金申請システム・Jグランツの主な特長>
・公募から事業完了後の手続までをオンラインで完結できる。
・リアルタイムに申請状況や処理状況が把握できる。
・GビズIDにより書類の押印が不要となり、紙でのやり取りもなくなる。
・GビズIDにより申請者の基本情報や過去に補助金申請した情報等が自動転記される。
なお、GビズIDとは、事業者が1つのアカウントで複数の行政サービスにアクセスできるようになる認証システムで、Jグランツを利用する際にも必要になります。GビズIDの取得には、2~3週間程度の審査期間が必要となりますので、公募開始前からのGビズIDの取得が必要になります。
6.既受給企業には減点措置を発動
予算案のPR版には以下のとおりの記載があります。
「過去3年以内に同じ補助金を受給している事業者には、審査にて減点措置を講じることで、初めて補助金申請される方でも採択されやすくなります。」
これまで何度も不採択になっている企業様にはチャンスになるでしょう。しかしながら、これまで何度も採択されている常連の企業様には不利になるかもしれません。また、ものづくり補助金の活用を前提にした設備投資計画をお持ちの企業様については、ものづくり補助金以外の補助金・助成金へのエントリーも検討する必要があります。その際には、主に以下の事項を検討して、望ましい補助金・助成金にエントリーする必要があります。
<検討事項1>必要な補助金額・助成金額
<検討事項2>補助金・助成金の目的(設備投資、研究開発、試作開発等)
<検討事項3>事業の実施体制(自社のみ、他の企業との連携の有無、大学や公設試との連携の有無等)
<検討事項4>事業実施期間