事業承継・引継ぎ補助金は、経営革新事業、専門家活用事業、廃業・再チャレンジ事業の3つから構成され、ここでは設備投資が主目的となる経営革新事業(Ⅰ型:創業支援型、Ⅱ型:経営者交代型)を取り上げます。
6月16日に更新された「令和5年度募集 6次公募」(申請期間:2023年6月16日(金)~8月10日(木))の公募要領の概要をご紹介します。
目次 |
1.5次公募との主な変更点
6次公募から、保険診療報酬を受け取る事業が対象外となりました。この背景として、保険診療報酬は国費、事業承継・引継ぎ補助金も国費であり、国費の二重取りはよろしくないという国の判断があると言われています。
その他、保険診療報酬を受け取る事業が対象外となっているのは、ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金、事業再構築補助金となります。
2.事業の目的
※5次公募からの変更はありません。
中小企業者及び個人事業主が事業承継、事業再編及び事業統合を契機として新たな取組を行う事業等について、その経費の一部を補助することにより、事業承継、事業再編及び事業統合を促進し、我が国経済の活性化を図ることを目的とする。
3.申請要件
※5次公募からの変更はありません。
■ 全型共通(主なもの)
以下の2つをいずれも満たす必要がある。
①日本国内に拠点又は居住地を置き、日本国内で事業を営む中小企業者等(個人事業事業主を含む)であること。なお、個人事業主は青色申告書であること。
②地域の雇用の維持、創出や地域の強みである技術、特産品で地域を支える等、地域経済に貢献している(または貢献する予定の)中小企業者等であること。
※医療法人が関係する事業承継は対象外。
■ Ⅰ型:創業支援型
①個人事業主から個人事業主への事業譲渡の場合
以下の対象期間中に、事業承継を契機として承継者(事業を引き継ぐ者)が個人事業主として開業(予定を含む)し、被承継者(事業を引き継がせる者)の個人事業を引き継ぐ(予定を含む)。
※ 事業承継対象期間:2017.4.1~2024.4.24
②会社から会社への事業譲渡の場合
以下の対象期間中に、事業承継を契機として承継者(事業を引き継ぐ者)が会社を設立(予定を含む)し、被承継者(事業を引き継がせる者)の会社としての事業を引き継ぐ(予定を含む)。
※ 事業承継対象期間:2017.4.1~2024.4.24
■ Ⅱ型:経営者交代型
①個人事業主から個人事業主への事業譲渡の場合
既に個人事業主として開業している者が承継者となる。申請時点において、被承継者からの事業譲渡が完了済であるか、完了予定であって以下の対象期間中に完了する。
※1 事業承継対象期間:2017.4.1~2024.4.24
※2 「未来の承継」(補助事業完了から5年後までの承継)は個人事業主は対象外となる。
②同一法人内での代表者交代の場合
申請時点において、代表者交代が完了済であるか、完了予定であって以下の対象期間中に完了する。
※1 事業承継対象期間:2017.4.1~2024.4.24
※2 「未来の承継」(補助事業完了から5年後までの承継)は対象となる。
4.補助対象経費
※5次公募からの変更はありません。
1)事業費
店舗等借入費、設備費、原材料費、産業財産権等県連経費、謝金、旅費、マーケティング調査費、広報費、会場借料費、外注費、委託費
2)廃業費
廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、移転・移設費用
5.補助上限額と補助率
※5次公募からの変更はありません。
①<小規模事業者の要件(商業・サービス業)>従業員数が5人以下
②<営業利益率低下の要件>以下のAとBのいずれかを満たす。
A 直近の事業年度の営業利益率について、2期前の事業年度における営業利益率と比較して、低下していること
B 交付申請時点で進行中の事業年度における連続する任意の3ヶ月の営業利益率の平均値について、直近の事業年度における同月3ヶ月の営業利益率の平均値と比較して、低下していること。
③<赤字の要件>直近決算期の営業利益または経常利益が赤字
■賃上げの要件:以下のAとBのいずれかを満たす。
A 補助事業期間終了時に、事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上の賃上げを行う。
B 上記を既に達成している事業者は、補助事業期間終了時に、事業場内最低賃金+30円以上の賃上げを行う。
<注意1>賃上げの達成については、補助事業完了後の実績報告時に確認するものとし、本報告時に補助事業期間終了日を含む支払期間の賃金台帳等の提出を求める。 実績報告時に本要件が未達の場合は、交付決定通知書に記した補助上限額の変更(800万円を600万円に減額)を行う。
<注意2>賃上げ要件を適用した場合には、事業化状況報告(5年間)にて毎年3月の賃金台帳を国に提出することになり、「事業場内最低賃金が交付申請時の地域別最低賃金+30円以上」が未達の場合には、補助金額を事業計画年数(=一律5年)で除した額の返還が求められることがある。ただし、付加価値額(=営業利益+人件費+減価償却費)の増加率が年率平均1.5%に達しない場合や、天災など事業者の責めに負わない理由がある場合は、上記の補助金一部返還を求めない。
6.補助対象事業
※5次公募から変更はありません。
承継者が引き継いだ経営資源を活用して実施する、以下の3つのいずれかに1つ該当する経営革新的な事業が補助対象となります。
対象事業 | 申請上の必須事項 | |
デジタル化に資する事業 | 以下の①または② ①DXに資する革新的な製品・サービスの開発 ②デジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善 |
・「DX推進指標」による自己診断を提出していること。 ・「SECURITY ACTION」の「一つ星」または「二つ星」の宣言を行っていること。 |
グリーン化に資する事業 | 以下の①または② ①温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービスの開発 ②炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供の方法の改善 |
・事業計画期間内 に、事業場単位または会社全体での炭素生産性を年率平均 1%以上増加する事業であること。 ・これまでに自社で実施してきた温室効果ガス排出削減の取組の有無(有る場合はその具体的な取組内容)を示すこと。 |
事業再構築に資する事業 | 新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換のいずれかに該当する事業 |
<補助事業計画の必要条件>
補助事業計画は、補助事業期間を含む5年間の補助事業計画において、生産性向上要件(付加価値額or付加価値額/人の伸び率が3%以上)を充足している必要がある。なお、生産性向上要件の達成状況については、補助事業終了後5年間の事業化状況報告等にて、事務局が進捗を確認する。目標値に達していない場合の取り扱いは事務局判断になるとのこと(2023/4/21・6/20事務局から聞き取り)。
7.採択率
経営革新事業全体の全業種の採択率は以下のとおりとなっております。
<1次公募>50.2%(209者中105者採択)
<2次公募>55.9%(188者中105者採択)
<3次公募>56.6%(189者中107者採択)
<4次公募>55.3%(264者中146者採択)
<5次公募>60.2%(309者中186者採択)
8.歯科関連の採択数
1~5次にて歯科関連の採択数は全国で合計18件となっています。1~4次は各回1~2件の採択でしたが、5次は11件の採択となりました。
9.保険診療報酬を受け取る事業の取扱い
6次公募から、保険診療報酬を受け取る事業は対象外となりました。そのため、機器・建物共に自費診療で使用するもののみ補助対象となります。この背景として、保険診療報酬は国費、事業承継・引継ぎ補助金も国費であり、国費の二重取りはよろしくないという国の判断があると言われています。
① 機器の申請
自由診療をテーマにした申請書(事業計画書)を作成し、補助金受取後(機器の耐用年数期間内)の機器の使用が自由診療に限定されることになりました。
歯科医院様が申請する場合、機器導入後の使用条件をまとめると以下のとおりとなります。
導入する機器名 | 機器導入後の使用条件(耐用年数期間内) | |
歯科用CAD/CAMシステム | 自由診療のみで使用する。CAD/CAM冠・インレーは作製しないか、作製しても保険請求しない。 | |
歯科用CT | 複合機(3D・2D) | <3D機能>自由診療のみで使用する。保険診療で使用しても、保険請求しない。 <2D機能>使用しない。 |
現有の2D機の3Dへの機能拡張 | 自由診療のみで使用する。保険診療で使用しても、保険請求しない。 | |
3D単体機 | 自由診療のみで使用する。保険診療で使用しても、保険請求しない。 | |
セファロ機能のみ | 自由診療のみで使用する。保険診療で使用しても、保険請求しない。 | |
その他の機器 | 自由診療のみで使用する。保険診療で使用しても、保険請求しない。 |
② 建物の申請
本補助金で整備した建物中の診療では保険診療報酬を請求できません。(2023/6/20・6/28事務局から聞き取り)。
10.主な加点項目
※5次公募から変更はありません。
一般的な事業主様が取得できる加点は以下の3つとなります。なお、以下の2について、「経営力向上計画」の認定、「経営革新計画」の承認、「先端設備等導入計画」の認定は、いずれか1つしか加点を取得できません。
1.「中小企業の会計に関する基本要領」又は「中小企業の会計に関する指針」のチェックシート
2. 交付申請時に有効な期間における「経営力向上計画」の認定、「経営革新計画」の承認又は「先端設備等導入計画」の認定を受けている。
3.交付申請時に有効な期間における「事業継続力強化計画」 の認定を受けている。
11.今回の公募スケジュール
公募開始 | 令和5年6月16日(金) |
申請受付 | 令和5年6月16日(金) |
応募締切 | 令和5年8月10日(木)17時 |
採択発表 | 令和5年9月中~下旬 |
12.再応募・再審査
※5次公募分からの変更はありません。
1~5次公募で不採択だった方は、6次公募に再度ご応募いただくことが可能です。
13.今後の公募スケジュール
本補助金と同じく生産性革命推進事業の1つであるものづくり補助金は、令和6年度(令和7年3月)まで概ね3ヶ月1回のペースで切れ目なく公募される予定となっております。そのため、本補助金もこれと類似したペースで公募されると考えられます。
14.申請方法
※5次公募からの変更はありません。
電子申請システムでのみ受け付けることとなり、GビズIDプライムアカウントの取得が必要となります。なお、アカウントの取得には2週間程度を要することとなります。
15.補助事業完了後5年間の報告義務等
※5次公募からの変更はありません。
1)事業化状況報告
補助対象事業完了後、5年間、事務局が指定する所定の日までに当該事業についての事業化状況を事務局へ報告すること。
2)収益状況報告
補助対象事業完了後、5年間、補助対象事業に対する収益状況を示す資料を作成すること。その資料にて一定以上の収益が認められた場合には、事務局に報告し、精査の結果、交付した補助金の額を上限として収益の一部を納付すること。
3)取得財産の管理等
補助対象事業において取得した財産については善良なる管理者の注意をもって適切に管理すること。加えて、取得価額が1件当たり 50万円以上(税抜)の取得財産については、事業終了後も一定期間において、その処分等につき事務局の承認を受けなければならない。また、承認後に処分等を行い、収入があったときには、補助金の一部を納付する場合があることに留意すること。
16.個人事業主が医療法人になった場合の取扱い
※5次公募からの変更はありません。
補助金の受取後、機器の耐用年数期間内に医療法人化すると、財産処分の扱いとなり、補助金額の一部を返還することになります。
17.その他
・実施主体は中小企業庁です。
・毎回の採択率は50~60%程度です。